「知的財産推進計画2026」に対する意見

一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)は、日本のアニメ業界のクリエイターやアニメファンによって構成された業界団体です。

「知的財産推進計画2026」に対し、コンテンツ産業、とりわけアニメ産業の持続的発展と文化的基盤の強化の観点から意見を提出いたします。

まず、本計画が掲げる「IPトランスフォーメーション(知的創造サイクルの新たな構築)」の3本柱に、「イノベーション拠点としての競争力強化」「グローバル市場の取り込み」と並び「AI等先端技術の利活用」を今後の重点取組と位置づけたことで、海外のコンテンツ市場に誤ったメッセージを送っていないか、大きな懸念を抱いております。

AIの利活用を一概に否定するものではありませんが、少なくともIPと密接な関係を持つコンテンツ産業・アニメ産業で生成AIを導入した創作を進めることは、これまで築き上げてきた日本産コンテンツのブランド価値や信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

「グローバル市場の取り込み」を目指すにあたっても、生成AIによる創作コンテンツが、市場を底支えするコアなファン達からどのように評価されているものか、実態に即した把握を行うことが重要です。

一部のIPにおける安易な生成AI活用の印象が、日本産コンテンツ全体への評価に波及するおそれがあると考えます。

日本のコンテンツが、なぜ世界でファンを増やしてきたのか。ただでさえ水物のコンテンツ産業が、市場の信頼を失うのは一瞬のことです。

日本政府がコンテンツ産業を基幹産業の一つとして位置付け、本計画を通じてその方向性を英語版を含めて内外に示す以上、現場のクリエイターや制作関係者も、本計画の内容が海外からどのように解釈・評価されるかについて無関心ではいられません。

IPが必ずしもコンテンツ産業のみを指す概念ではないことは承知しておりますが、コンテンツ分野と結び付けて理解される場面が多いことも踏まえ、AI活用の位置付けについては、引き続き慎重な検討が行われることを期待いたします。

一方で、過去の知財戦略の振り返りにおいて、日本の競争力強化には知的資本の充実とその活用が重要であると再確認されている点について歓迎いたします。

コンテンツ産業が生み出してきたアニメ作品やキャラクター、ブランドといった無形資産は、日本の「知的資本」の中核を成す存在です。

しかしながら、製作委員会の解散や、著作権・著作者人格権に関する契約関係が十分に整理されていないことなどを理由として、現在もなお十全に活用できずにいるコンテンツが多く存在している現状があります。

こうした知的資産を将来にわたって有効に活かしていくためには、国が一定の役割を果たし、アニメ産業におけるクリエイターのIP活用に関する考え方や留意点を整理したガイドラインが示されることが、大いに有益であると考えます。

具体的には、製作委員会解散後の権利の所在を明確にすることを契約書に盛り込むことや、著作権の認められるキャラクターデザイナー等の個人クリエイターへの利益還元についての取り決めを推奨するなどが考えられます。

価値創造の基盤となるのは、個々のクリエイターが有する技能と創造性であり、それを適切に支える環境整備なくして、持続的な競争力の向上は困難です。

創作環境の整備は、必ずしも多額の財政支出を伴うものに限られません。ガイドラインの策定といった形での制度的な支援もまた、将来への重要な投資として位置付けられることを期待いたします。

1. 知的財産の「創造」

(1)知財・無形資産への投資による価値創造

本計画が「知的財産の創造」において掲げる無形資産投資の拡大方針は、アニメを含むコンテンツ産業の発展に不可欠であり、方針を歓迎いたします。

クリエイターに正当な対価と成果配分が行き渡る仕組みを整え、人材への継続的な投資を行うことが、結果としてコンテンツ立国としての基盤強化につながるものと考えます。

また、本計画には、クリエイターを含む現場の声を政策に反映するための官民協議の場が盛り込まれていることも歓迎いたします。

願わくば、様々な立場、意見のある当事者が集まり、こうした枠組みを通じて、コンテンツ産業の制作現場における収益分配や待遇改善といった課題についても、継続的な議論が行われることを期待いたします。

さらに、「価値デザイン経営」や無形資産に関する情報開示といった企業向け施策を進めるにあたっては、コンテンツ産業固有の特性にも十分配慮する必要があります。

アニメ制作会社等においては、自社オリジナルIPの創造力、クリエイター同士で刺激し合い切磋琢磨する関係そのものが、何よりの重要な無形資産である一方、現行の会計基準や投資指標では、その価値を十分に評価しきれない側面が存在します。

この点について、コンテンツ分野における無形資産の価値を適切に捉え、支援につなげるための考え方や指針が整理されていくことは、有意義であると考えます。

例えば、自社IPの創造に取り組むアニメ制作会社等に対する税制上の配慮や支援策、あるいはコンテンツ企画への投資を後押しする金融面での取組など、他産業の無形資産投資促進策とは異なる視点からの支援の在り方も検討に値するものと考えます。

作品やキャラクターといった知的財産への投資が、将来的に国富の創出や雇用の拡大につながる可能性を有していることを踏まえ、実効性のある取組が進められることを期待いたします。

また、詳しくは後述しますが、コンテンツやキャラクターを軸にした資産の運用を行う上では、キャラクターのパブリシティ権を認めるなどの法的な観点も検討が必要であると考えます。

(2)AIと知的財産権

本計画2026案において、AI時代の知財について、「知的財産法だけでは解決できないリスクにはAIガバナンスの取組と連動し、法・技術・契約を組み合わせ関係者が連携して機動的に対応する必要がある」との趣旨が明記されていることを歓迎いたします。

私たちNAFCAは昨年度の「知的財産推進計画2025」に関する意見をはじめ、AIと著作権・キャラクター権利等に関するパブリックコメントを度々提出し提言してまいりました。

引き続き、クリエイターの立場から以下の論点に強く留意いただきたいと考えます。

1 キャラクターの無断模倣生成

生成AIの普及により、人気キャラクターの外見や声を本物と見分けが付かないほど酷似させた偽コンテンツを瞬時に大量生成し、無断で改変・生成し流通させることが容易になりました。

現行法上、画風やキャラクターのアイデア等は著作権による保護の対象となりにくいとされる一方、生成AIによりキャラクター固有の姿や声を再現した「偽コンテンツ」が乱造される現状に鑑み、キャラクターのパブリシティ権保護や著作者人格権侵害への対処を再検討すべき段階に来ているのではないでしょうか。

作品の中核をなす要素であるキャラクターが、無断模倣により作品内と異なるイメージを植え付けられた場合には、作品そのものやその経済効果をも毀損される可能性は高く、現状のまま静観を続けていては、コンテンツの管理・運用がますます難しくなると考えます。

2  画風・作風の過度な模倣

特定のアニメ作品・作家の画風・作風ですら、生成AIに大量の作品群を追加学習させることで短期間に模倣作品を量産できるようになっています。

従来の著作権法ではアイデアやスタイルは保護対象外ですが、AI時代においては新たな法制度(いわば「生成AI法」)の検討が必要と考えます。

欧米では、AI学習目的で大量の著作物を無断利用しそれらと競合する生成物を生み出す行為はフェアユースの範囲を逸脱し侵害になり得るとの議論も進んでいます。米国の連邦著作権局においても、生成AIのための著作物利用が市場に与える影響を「市場の希釈化」という言葉で表し、フェアユースの範囲外であると整理されています。

日本でも、創作者の許諾なく作品データをAI学習利用することへの規制や対価還元の枠組みを検討すべきです。

3 無断学習による声優等の声の違法な模倣について

声優、俳優、歌手等実在の人物の声が生成AIの学習素材として無断利用され、特定のキャラクターや人物を想起させる合成音声(ボイスチェンジャー等)に加工・販売される事例が既に散見されています。これはパブリシティ権の侵害にとどまらず、内容によっては名誉毀損にもなり得る由々しき事態です。

演者の声は個人を表す人格そのものであり、その無断利用を防ぐ法的措置・ガイドライン整備が急務です。

4 学習データ等の開示と生成AI使用の明示義務について

本計画において学習データ等の開示について前向きな言及があることを歓迎いたします。

現在は、後述する海賊版サイトからの学習も行われているとの報告例が後を断ちません。仮に生成AIを作品作りの補助に使用するとしても、それらがどのような学習を経て作られたものであるかは、作品の評価を左右する重要な問題です。

また、生成AIを使用した画像、映像、音声にはそれとわかるよう明示することが、視聴者の信頼を得、ひいては大きなシェアを確実にしていくことにも繋がります。

昨今問題になっているディープフェイクの観点だけでなく、日本クリエイターたちが生み出し、世界で評価されるコンテンツを守るためにも、生成AI使用の明示義務化を含む課題について、検討が進められることを要望いたします。

5  著作権周知徹底の必要性

生成AIの有無に関わらず基本的な著作権ルールに反するコンテンツ利用が後を絶ちません。誰もが高度な生成AIを使える時代だからこそ、国民全体のリテラシー向上に向けた幅広く手厚い著作権啓発が急務です。

クリエイターの権利を軽視しない健全な創作文化を育むため、初等中等教育から専門教育まで体系的な知財教育の充実を、あらためて要望いたします。

6  政策形成への権利者参加

生成AIのルール整備を議論する政府会議には、ぜひ様々な立場の著作権権利者や実演家などクリエイター側の代表を正式メンバーとして加え、公平な立場で意見を聴取・議論に参加させてください。

法律家や開発事業者、学者等だけでなく、影響を直接受ける当事者の様々な角度の声を反映させることが、実効性あるガバナンスの構築につながります。

7 機械翻訳への過度な依存リスク

生成AIによる安易な自動翻訳コンテンツが氾濫することに強い懸念を持っています。

ことアニメ作品のように翻訳の質が作品価値を左右する領域では、不適切な機械翻訳の蔓延は作品世界の毀損や作者の人格権侵害にもつながりかねません。

実際、「意味が伝われば十分」とばかりに粗雑な翻訳が海外に出回り、日本産コンテンツの評価を下げてしまう事態も起こり得ます。2025年12月には米Amazon社が『BANANA FISH』という日本の人気アニメに生成AIによる吹替をつけリリースしましたが、サブスクリプションの解約など視聴者の反発が大きく、わずか数日で取り下げられる事例もありました。

コンテンツの海外展開において、優れた翻訳者によるきめ細やかなローカライズは欠かせず、その育成支援が急務でしょう。

誤訳・粗悪翻訳による作品ブランド毀損への対処も、広義の知財保護戦略に含めて検討いただきたいと存じます。

「誰もがAIの恩恵を享受でき、かつ自身の肖像・作品等が無断で学習に使われない権利」が保証される人間中心のAI社会に向けて、便利さありきではない、慎重に人権や著作権とのバランスを図ったAI戦略の推進をお願い申し上げます。

(3)創造人材の強化・ダイバーシティの実現

知的財産の創造を担う人材は、研究・技術分野に限られるものではありません。

アニメをはじめとするコンテンツ産業においても、まずは国内の人材育成を優先するべきではありつつも、今後の国際競争の激化や国際共同制作の拡大を見据えた場合、一定程度の海外人材の参画は不可避であり、また、適切に進められる限りにおいては望ましい側面もあると考えます。

博士号等に限らない多様な「創造人材」を計画上も包摂し、在留資格・就労条件・契約・生活支援等で柔軟な制度運用・ガイドライン整備を求めます。

一方で、ダイバーシティへの過度な迎合が表現の画一化や自主規制を生み、日本独自の文化に共感してきた海外市場の信頼を損なうおそれにも留意が必要です。多様性は、翻訳・ローカライズの質向上や文化文脈の適切な伝達の形で活かすことが、国際的受容の実効性につながります。

また、日本が「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約」に未加盟であることが、諸外国の助成・共同制作枠組みの活用で一定の制約となる事例があります。

直ちに加盟の是非を論じるものではありませんが、非加盟に伴う実務上の不利益を政府として把握・整理し、契約・資金・IP整理の相談体制、非加盟前提での支援スキーム、海外交渉の制度的サポート等、実務的ケアを講じてください。併せて、国内クリエイター育成と裾野拡大にも、継続的な投資を強く求めます。

最後に、人材基盤強化には国民全体の知財リテラシー向上が不可欠です。創作物を尊重し適切に利用する文化の醸成に向け、著作権教育とネットリテラシー施策の一層の充実をお願いします。

2.知的財産の保護

(2)海賊版・模倣品対策の強化

海賊版や模倣品による被害は、アニメ産業を含むコンテンツ産業の持続可能性を脅かす重大な課題です。

本計画において、引き続き海賊版対策の強化が位置付けられている点について、強く支持いたします。

とりわけ近年では、漫画・アニメの違法配信サイトが、生成AIの学習用データとして利用されているとの指摘もあり、権利侵害の問題が新たな形で拡大しつつあると認識しています。

こうした状況は、クリエイターおよび制作会社にとって看過できない経済的・文化的影響を及ぼすおそれがあり、引き続き注意深い対応が求められます。

政府には、既存の著作権法および関係法令の適切な執行に加え、インターネット上における海賊版対策について、実効性の確保に向けたさらなる取組が進められることを期待いたします。

従来型の削除要請や取締りにとどまらず、誤訳や内容劣化を伴う違法コピーへの対応や、正規版の品質や価値を適切に伝えるための広報・啓発の取組なども含め、総合的な観点からの支援策が検討されることが望ましいと考えます。

模倣品対策については、アニメキャラクターの無断使用グッズや海賊版フィギュアが国内外で流通している問題に加え、近年では生成AIを用いて作成された偽の「サイン入り色紙」や「生原稿」等が、ネット通販等を通じて販売される事例も見受けられます。

こうした行為は、ファンの信頼を損なうのみならず、クリエイターの人格権や作品の価値や信頼にも関わる問題であり、知財保護の観点からも整理が求められる論点であると考えます。

なお、本計画の「知財の保護」には、技術流出防止、産業財産権制度の強化、地域における知財保護の推進といった項目が含まれていますが、これらは主として製造業や地域経済を想定した施策である一方、コンテンツ産業にも関連する側面があります。

例えば、アニメ制作の現場においても、海外企業による人材の引き抜きや制作データの管理といった点について、業界内での意識向上が課題として指摘されています。海外企業による人材の引き抜きの多くは、報酬の格差が一番の理由となることが多く、この点から見ても、国内クリエイターへの利益還元は政策的にも重要な課題であると考えます。

政府によるサイバーセキュリティに関する支援やノウハウの共有は、クリエイティブ産業にとっても有益であり、こうした施策が幅広く活用されることを期待いたします。

ぜひ幅広い視点から知財保護策が進められ、日本全国において正規のコンテンツが適切に流通・利用される環境が着実に整備されていくことを願っています。

3.知的財産の「活用」

(3)新たな国際標準戦略

国際標準戦略の観点から、日本アニメの制作環境や、使用されるソフトウェア・機材等についても、今後の世界のアニメ産業において一定の参照点として位置付けられていくことが期待されます。

そのための検証環境の整備や情報発信について、継続的な支援が行われることを望みます。

一方で、日本アニメの魅力は、その独自性や表現文化にあることも広く認識されています。

海外の価値観や流行をマーケティングして制作するような作風や方針が推奨されることのないよう、この点についても、十分に留意されることが重要であると考えます。

4. 新たなクールジャパン戦略のフォローアップ

(1)新たなクールジャパン戦略の実装

政府が策定した「新たなクールジャパン戦略」については、私たちNAFCAも別途パブリックコメントを提出し、現場の視点から意見を述べてまいりました。

クールジャパン戦略のリブートにより、日本のアニメ産業が持続可能な産業として発展していくことを心より期待しております。

これまでも繰り返し申し上げてきたとおり、知財推進の観点からも、まずはクリエイターの裾野を広げ、技術の承継を確実なものとすることが、アニメ産業の将来にとって極めて重要です。

コンテンツの海外展開支援とあわせて、後進育成に関する取組についても、中長期的な視点で継続されることを期待いたします。「新たなクールジャパン戦略」パブリックコメントにも具体的な人材育成案などを記載しておりますので、そちらもご覧ください。https://nafca.jp/public-comment03/

また、新たなクールジャパン戦略の具体的施策を推進するにあたっては、アニメをはじめとするコンテンツ制作現場の声が、継続的に反映されることが重要と考えます。

官民協議会等の場において、定期的な進捗確認や意見交換が行われ、現場実態との乖離が生じないよう運用されることを望みます。

限られた予算が、真に効果の高い支援策へと適切に配分され、クリエイターや中小制作会社に実感をもって届く形となることを期待しております。

(2)コンテンツ戦略

デジタル時代のコンテンツ戦略として、本計画において特に重要と考えられる論点の一つが、巨大プラットフォーム事業者との関係性です。

現在、NetflixやAmazon等のグローバルな動画配信プラットフォームが、アニメを含む映像コンテンツ市場において大きな影響力を有しています。

公正取引委員会が2025年12月に公表したアニメ産業に関する実態調査報告書においても、動画配信事業者との取引に関し、制作委託費の水準自体は高いとの評価がある一方、買い切り型契約が主流であるため、作品のヒットによる長期的な収益が制作会社に還元されにくい構造的課題が指摘されています。

また、特に外資系動画配信事業者との取引において、視聴回数等の重要な情報が十分に共有されないとの声が示されており、適正な対価設定や契約条件の見直しを難しくしている側面があります。

健全な市場形成の観点から、必要な範囲での情報共有や実質的な協議が行われる環境整備が重要であると考えます。

日本の制作会社の中には、プラットフォームから委託を受けて下請制作を行うケースと、自社IPを提供するケースの双方がありますが、いずれの場合も交渉力の面で課題を抱えているとの声が少なくありません。

日本のコンテンツが国際的に高い競争力を有していることを踏まえ、その強みが適切に評価される取引環境の整備について、引き続き検討が進められることを期待いたします。

具体的には、標準的な契約書式や契約ガイドラインの整備、契約交渉時に相談可能な支援窓口の活用、必要に応じた独占禁止法や下請法の適切な運用など、既存の枠組みを活かした対応が考えられます。

欧州では、クリエイターへの収益分配に関する制度や、放送・配信事業者に一定割合の自主制作枠を求める仕組みなどが議論されています。

日本においても、配信プラットフォームとコンテンツ供給者が相互に利益を享受できる市場環境の形成に向けた検討が進むことを期待いたします。

また、これまでも地方を題材にした、あるいは特定地方で繰り広げられるアニメ作品はたびたび地方自治体とも連携し、当該地方に大きな経済的効果をもたらしてきました。これらが評価されることを歓迎する一方、今後このスキームを広げていくに当たっては、制作現場のキャパシティも考慮する必要があります。これまでも述べてきたとおり、日本のアニメ産業では人材育成が長く置き去りにされてきました。その結果、現在のアニメ業界ではスキルのある人材が枯渇しています。他方アニメの製作本数自体は2000年頃と比べて3倍になっており、製作現場は常に人手不足に喘いでいます。このままでは現状の本数を作り続けることは、早晩できなくなるでしょう。さらに地方との綿密な打ち合わせが必要な作品となれば、いわゆるプリプロダクションの段階で膨大な時間と高度なスキルを要します。

このような状況下では、単純な本数を目標とするのではなく、人材育成をしながら作品を製作できる持続可能な体制を整えることが急務です。より良いアニメ作品を作り続け、日本の基幹産業としていくためにも、数を多く作ればいい、ということではない現状が、正しく認識されることを期待します。