パブリックコメント「International Draft Guiding Principles for Organizations Developing Advanced AI systems」

「広島AIプロセス」として進められているルール形成のドラフト版に対して、NAFCAより提出したパブリックコメントを公開します。

<導入(7段落目)>

私たち一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)は、日本のアニメ産業に従事するクリエイターが集まって作られた団体です。

世界中にファンを持つ日本アニメは、そのSF的想像力によって、国境を越えて数えきれないほど多くの AIエンジニアの着想にヒントを与えてきました。 この度、AIに関する国際的な指導原則が作成されるにあたり、日本初の長編テレビ用連続アニメ「鉄腕アトム」以来 60 年にわたって人とロボットの共存を描いてきた業界の一員として、以下コメントいたします。

先日の国連会議では、AIを使って人間の判断に基づかず攻撃する自律型致死兵器システム(LAWS)について対応が急務だと強調する決議がなされました。 高度なAI技術は、物理的な兵器だけに留まらず、アニメや映画といったコンテンツを通した認知戦のあり方にも大きな影響を与えることは間違いありません。

私たち日本のアニメ制作者はAIの平和利用を願い、また国連が作成する指導原則が平和利用に繋がることはもとより、私たちクリエーターの権利を尊重することを願っています。

「人権に重大なリスクをもたらすような先進的AIシステム」について、絵、文章、音声、映像などを生成するAI についても、悪意のある使い方によれば「犯罪への悪用を可能にし、安全、セキュリティを損なう」ものであると指摘します。

また、あらゆる創作物がAIおよびディープフェイクを用いた認知戦に利用されることを非難する立場からも、「人権に重大なリスクをもたらすような先進的AIシステム」に強い警鐘を鳴らし、一定範囲の規制が必要であると考えます。

<導入 (8 段落目)>

先日日本で開催された国連の「ビジネスと人権」部会にて、私たち NAFCA はアニメ業界の長時間労働・低賃金問題について証言しました。 この状態を生成AIが改善してくれるという期待の声が業界内から上がっていますが、現在の生成AI技術の多くは、クリエイターの著作権、人権を蔑ろにするケースが少なくないと認識しています。

そのため、世界中で愛されている日本のアニメ産業が、現状の生成AI技術によって改善されるとの見通しは立てることができません。

逆に、人権を蔑ろにする企業などが日本のクリエイターが努力して身につけてきた技術を盗用することで、私たちのアニメ文化の蓄積を簒奪する可能性について深く憂慮しています。

新しく国連によって示される指針が、ユネスコが「持続可能な開発と社会的一体性の達成を支援するために有形、無形の遺産を発展させること、平和の文化を育成するために、多様な文化の表現や異文化間の対話を保護」する活動の延長線として、高度なAIの脅威から世界中のクリエーターの権利を守ることを期待しています。

<原則 4>

私たち一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟は、原則4に全面的に同意します。 ただし、ステークホルダーのなかには芸術分野のクリエーターが存在することに、より留意してほしいと思います。 先にも指摘したように、AIを利用した認知戦の材料として創作物が使用されることは十分に現実的なリスクであると考えています。

<原則 7>

私たち一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟は、原則7の目指す信頼性の高いコンテンツ認証などについて、義務づけに強く期待します